先日、ヤマト運輸が赤字に陥っているという内容の記事を書き、アマゾンや楽天が独自の物流網構築に取り組んでいるという内容を取り上げました。
ヤマト運輸が60億の営業赤字。問題の打開策について ●日本経済新聞電子版 先日、日経新聞にてクロネコヤマトが60億の赤字だと報じられました。原因は人材確保による人件費の高騰だと書かれています。人を集めたのはいいものの、予想に反して利益が出なかったというのです。 これはどこまで...
その後も調査を進めていましたが、非常に興味深い内容を入手しましたので記事にまとめて、公開しようと思います。今回のキ-ワ-ドは「分散化」です。徐々に全貌が見えてきますので、最後までお付き合いください。
攻勢に転ずるアマゾン
ヤマトにそっぽを向かれたアマゾンですが、泣き寝入りする事なく独自の物流網の構築に乗り出していました。
アマゾンのことだから大規模な資金を投入して直営の物流会社を設立するのかと思いきや、実際にはその逆で、個人の宅配ドライバーを確保する動きに出ています。
黒ナンバーの貨物車両を所有する個人の宅配業者です。勤務日時が自由に選べるアマゾン独自の働き方は「アマゾンフレックス」と命名されており急速に拡大しています。
自由度の高い働き方で、自分の都合に応じて仕事に取り組めます。労働時間はブロックと呼ばれる単位で区切られており、4時間ブロック、8時間ブロックなど、様々な時間軸で取り組めます。
首都圏や愛知、福岡でスタ-トしています。福岡エリアであれば週休二日、1日8時間の業務で月額報酬は最大で39万円以上となっています。
従来まではアマゾンと提携している大手宅配業者と契約して荷物の配達を行うシステムでしたが、アマゾンフレックスは荷主のアマゾンとの直接契約になります。
中間に宅配業者を入れず、直で契約を交わすので中間マ-ジンがカットされ、その分宅配のドライバーに多くの賃金を支払っているのかもしれません。
これまではヤマトや佐川に全量委託していましたが、今後は個人のドライバーを取り込み、配達を分散化する動きが非常に速いぺ-スで進んでいくものと思われます。
多くの人手を必要とする人海戦術になりますが、ゆとりある業務内容で自分のぺ-スで働けるため個人の配送業者がどんどん登録しているそうです。
人が増えれば何でも出来ると言ったら語弊があるかもしれませんが、ヤマト運輸のドライバーのように長時間労働を強いられる事もなく、捌ききれない大量の荷物を押し付けられる事もないので、運送業界では注目されています。
しかも、アマゾンフレックスの基本は置配です。呼び鈴を鳴らしてサインをもらう事作業が省けますので、どんどん配達が進みます。
生産性は非常に高く、サイン、印鑑を貰うヤマト運輸に比べて2倍となっています。また、水や大型の品物はヤマト運輸に流れますので、大きな荷物が無く配達も楽です。
今後、隙間時間を利用する宅配ドライバ-が増え、配達の分散化が進み上手く軌道に乗れば宅配、物流業界においてもアマゾンの「一人勝ち」という状況になるかもしれません。
豊富な資金力を背景に自動運転やAIロボットの更なる導入が進めば、その日が来るのもそんなに先の事ではないと思います。
編集後記
宅配、物流業界でのアマゾンの動きも非常に興味深い内容でした。運送業における働き方改革の完全なる実施は不可能だと思っていただけに、アマゾンの取り組みは衝撃的でした。
これまでは、ヤマト運輸を始めとする大手企業も個人のドライバーを委託業者として繁忙期などに採用していました。しかし、会社側の都合で突然の首切りにあう事も多く不評でした。
この状況が続き、委託の業者が以前ほど集まらなくなったのも人手不足が助長された大きな原因の一つです。
このアマゾンフレックスは今後間違いなく拡大していきますので、大手の運送会社に勤務しているドライバーも自由な働き方を求めて転職してくるかもしれません。
人材の流出が進めば業界の勢力図が大きく変わる事になるでしょう。これまで社員を奴隷のようにこき使ってきた大手運送会社に対する大いなるしっぺ返しが今まさに巻き起ころうとしています。
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