ヤマト運輸が60億の営業赤字。問題の打開策について

  1. コラム

ヤマト運輸が60億の営業赤字。問題の打開策について

     ●日本経済新聞電子版

先日、日経新聞にてクロネコヤマトが60億の赤字だと報じられました。原因は人材確保による人件費の高騰だと書かれています。人を集めたのはいいものの、予想に反して利益が出なかったというのです。

これはどこまでが事実なのでしょうか?私は、この問題の原因は2点あると睨んでいます。

①サ―ビス残業を無くし、働いた分の適正な給料を支給したら赤字になった。

②慢性的な人手不足解消のため人員を確保したが物量が追い付かず利益が出なかった。

上記2点に集約されると思います。ヤマト運輸はこれまで残業代を適正に払わずに社員をこき使っていたという経緯があります。いわゆる未払い残業代の問題です。

今まで残業代を払っていなかったから利益が出ていたのだという声も上がっています。確かにこれまではサービス残業が日常化していました。全員が何の迷いもなく実施しているのですから、新たに入社した社員ですらその状況が当たり前だと錯覚するほどです。

通常の業務は朝6から7時ごろに出勤して荷物の積み込みからスタ-トします。タイムカ-ドを押すのは8時の朝礼前です。それ以前の時間は労働時間にカウントされません。

昼の休憩にしても、センターに帰ってきて荷物の仕分けから積み込みを行うので一時間もゆっくり食事をする余裕はありません。10分ほどで食事を流し込んで慌ただしく出発します。

夜の業務でもセンターに戻り端末を終了させタイムカ-ドを打刻したらその時点で終了なのですが、実際にはそこから資材の準備に提出物の用意などエンドレスな業務が待っています。

昼は休憩を確実に取得すれば特に問題になりませんが、朝晩の一時間はサ―ビス業務扱いですから最低でも一日2時間は会社に無償労働を提供していた事になります。繁忙期はもっと時間が増えます。

こういったサ―ビス残業を無くし適正に給料を支払った結果、赤字になってしまったという見方が先ず第一です。また働き方改革により、社員の待遇を良くしたことも利益率の悪化に拍車をかけているようです。

真相は不明ですが、当たらずとも遠からずといったところでしょう。

そもそも労働集約型の業務はネットビジネスと違って効率化を図るにしても限界があります。実際に荷物の配達をするのですから物理的な限界があるのは当然です。仮にAIロボットが配達を行っても、ドロ-ンを使っても同じです。

ある程度までは効率化できますが、必ず頭打ちになります。どこぞのベンチャ-企業の様に従業員数人で売り上げ数億円などという事は絶対に不可能です。

利益と費用のグラフはある一定の間隔をあけて同じ幅で上昇します。利益を上げるには多くの荷物を裁く必要があり、取扱個数が増えれば増えるほど人員も確保しなければならない。つまり費用も利益率の上昇に伴って増えていくのです。

少ない人員だと物理的な限界がきて未配達の荷物が発生するからです。しかし、人員を増やしても物量が減れば一人当たりの生産性が下がり、利益率も下がります。

荷物の増減はヤマト側で調整できません。当然ですが荷主が荷物を出さなければ個数は減ります。これは如何ともしがたい。人員を増やしても、荷物が増えず利益が確保できなかった。その結果、赤字となった。これが2番目の原因です。

ヤマト運輸の収益構造は非常に不安定です。人員を増やし、その人員に見合った荷物を確保できて初めて利益が出せるという状態だからです。

こうなった以上は、解決の糸口は一つしかありません。その方法は運賃の単価を上げる事です。前回も数年ぶりに値上げを実施しましたが全く持って機能していない。ポエムというしかありません。もっとガツっと上げるべきです。

そもそも、物価が年々上がっているのに値上げしないという考えが理解できません。仮に荷物が減っても利益率は大して下がらないでしょう。不必要な外部戦力をカットして少ない荷物を少ない人員で裁いた方が労働時間の問題もクリアー出来て一石二鳥だと思います。

歯に衣着せぬ言い方をすれば、消費者が荷物を出すのを躊躇するくらいの運賃で丁度よいと思います。しかし、こんな話をすると必ず反論が来ます。「他社に荷物を取られる」「社会的なインフラとして機能しなくなる」こういった意見です。全く持ってポエムです。

運送会社のパイは決まっています。新規参入業者がいない状況でヤマトからあふれた荷物を他社がフォロー出来る訳がない。人員不足、労働時間の問題など同じ苦しみに陥るのが関の山です。それにヤマトが値上げを実施すれば他社もそれに追随して値上げを行うと思います。結果オ-ライとなるでしょう。

社会的なインフラなんちゃらについても現実が見えていないと言わざるを得ない。そもそも、宅配システムの維持が厳しくなりつつある状況で、社会的インフラなどのお題目は捨て去るべきです。

これらの問題を解決するのは値上げしかありません。少なくとも私はその様に考えます。運賃が上がっても使う人は使うし、使わざるを得ない状況の人もいる訳です。これまでが薄利多売だったのだから勇気をもって決断すべきでしょう。

今後は働き方関連法案も徐々に厳しくなっていくと思います。これまでの様にのらりくらりとかわす事は出来なくなります。

値上げを実施した上で、しっかり方針を定めて経営をしていく必要があると思います。

 

2019年8月追記

物流業界の情報は頻繁には確認せず、日経の記事を流し読みする程度なのですが、先日久々に確認したら・・・

凄い事になってますね。楽天やアマゾンが独自の物流網の構築に取り掛かっているというのです。
「楽天市場」出店者向けに独自の配送ネットワークを構築する楽天の「ワンデリバリー」構想。

楽天には一歩遅れをとったアマゾンも物流拠点を着々と増やしています。この状況はまさに物流戦国時代の到来といった感じです。この状況では値上げをするだけでは問題の解決にはならないですね。

抜本的な構造改革が急務となるでしょう。アマゾン、楽天などの巨大企業はやるときは一気にガツっと来ますからこのままいけば業界の勢力図も変わるかもしれません。

でも、独自の物流網を構築するという事は、ヤマトや佐川が抱えている問題に直面する訳で、これをどうやってクリアしていくのか興味津々です。

 

 

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